結婚しなくてもいい、いいのだけれど。このコピーに切なくさせられる
「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです。」
2017年に「ブレーン広告グランプリ」で見事グランプリに選ばれた結婚情報誌ゼクシィのテレビCMは、このキャッチコピーで記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。
少子化、晩婚化、未婚率・離婚率の上昇が進む現代の時代性を捉えた上で、女性の強い意志を感じるこのコピーにふと切ない気持ちにさせられてしまいます。
CMに出てくる他の言葉にも、同じ情緒がにじんでいます。
「70億人が暮らすこの星で結ばれる。 珍しいことではなくても、奇跡だと思った。」
「一緒にいる2人がずっと、一緒にいることを決める。ただそれだけの、大いなる喜びでした。」
結婚するということを誇張して喜び祝うのではなく、ふとした日々の生活の延長線上にあるものとして見ること。
結婚する人、しない人のどちらをも傷つけずその多様性を尊重する一方で、当事者にとってそれは大きな大きな幸せの1つであると噛み締めていること。
CM中に流れる曲「This will be our year (今年はぼくらの年になる)」がそれを引き立てます。
配慮とロマンチックが噛み合った、見事なCMだと思いました。
このCMの恐ろしいところは、結婚しない人への配慮を示すことで、逆に「結婚しなくてもいいや」と思っている人の心のどこかをえぐり、寂しい気持ちにさせることに成功していること。
「結婚しなくても幸せになれる時代だよ。」
と言いながら、
「でも、結婚って良いものですよ」
というその裏にある真のアピールを行う広告として、ターゲットである独身者の心に、静かに冷たい穴を開けているのでした。